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レポートの序論では、心がけなくてはならぬことがあります。
それは、「人を思いやる」ことです。
と言えば、突飛なことだと思われるやもしれませんが、私はべつだん気を引こうとして言っているわけではありません。本心で申しています。
序論の作法の根底には、「思いやり」が存在します。
誤解なきよう平易に言い換えますと、本記事で私が申したいのは、
「とりわけ序盤では読み手を想定されよ」
ということであります。詳しくは、以下でお話しいたします。
目次
とりわけ序論では読み手を想定されよ
思いやりのある文章を書くには、まずこの二点を知らなくてはなりません。
- 序論は前置きではない
- 序論の役割は本論の全体像を伝えることである
以下で詳しく説明します。
序論は前置きではない
序論と聞いて、前置きを想像される方がおられるでしょう。
しかし、序論は前置きとは少々異なります。いや、全くの別物だと認識されたほうがよろしい。
前置きとは本題に入る前の言葉です。たとえば、日本には時候の挨拶という伝統的な習慣があります。
「桜花爛漫の候、ますます輝かしい春をお迎えのことと存じます」
などからはじまる挨拶文というのは風情がありますよね。
この習慣の影響もあるのか日本人は、とかく前置きをしてから話し始めがちです。
レポートには前置きは要りません。
考えてみてください。関連性のさほどない文章を無駄に読まされる気持ちを。
こういう風に読み手のことを思いやりますと、序論では前置きを捨てて、スパッと本題に入ることが肝要なのであります。
「本題に入るのは本論からではなく、序論から」
このことを肝に銘じられよ。
序論の役割は本論の全体像を伝えること
「序論では前置きなしで本題に入る」と聞けば、序論は本論と同じもののように思われるやもしれません。
かしかし無論、序論には序論の役目があります。
序論にてやるべきことは、本論の全体像を伝えることです。
言い換えれば、「序論で本論の予告をする」ということです。
何故そういうことをしなくてはならぬのでしょうか。その解は、やはり読み手のことを思いやることで見えてきます。
本論の全体像が伝えられれば、さながら地図を得たかのごとく、本論はたちまち読みやすくなることでしょう。反対に、本論の全体像がなければ、さながら暗闇の中を手探りで進むがごとく、読解するのに苦労することでしょう。
要するに、本論が同じ内容であっても、この心がけひとつで、全体の読みやすさが大いに変わるのです。
ここまでの話を聞いて勘の鋭い方はすでにお分かりでしょうが、本論の内容がかわると序論も書き換えなくてはなりません。序論は本論の全体像なのですから。
無理強いはしませんが、序論を書く順序は、本論や結論を書いた後にすることをおすすめします。
序論にて書くべき内容
先で「序論では全体像を見せよ」と言いましたが、具体的にどういうことを述べなくてはならぬのでしょうか。
全体像を見せるために書くべき要素は、以下の三点が挙げられます。
- なぜそのテーマを選んだのか
→背景・選んだテーマの重要性 - 何について話すのか
→テーマ・目的・問い・重要な概念の説明 - いかにして説明するのか
→論展開の予告・結論
これらが冒頭にて示されれば、貴方がやりたいことが明確になります。
ただし、実のところ序論で書かねばならぬことは、レポートの性質によりけりです。
それゆえに、
「序論ではこれらすべてを含めよ!」
などと声高らかに断言することはできません。
それらの要素については、「全体像を伝える」という序論の役目を念頭に置いて、各個人で取捨選択してもらわなければならぬことを断っておきます。
序論のテンプレート
書き出しに必要な要素をふまえると、序論で書くべきことは以下のとおりです。
- 背景
「20××年、〇〇の事件があり~」 - 明らかにすべき課題の重要性
「~は重要な課題になっている」 - 目的 大切
「本論は~することを目的とする」 - 重要な概念の説明
「ただし、ここでいう〇〇とは~」 - 論展開の予告
「~について解説し、~について論じることにする」
目的の書き方
「目的」は序論の最重要項目と言っても過言ではありません。
目的の書き方次第で、レポートの全体像はぼやけて見えたり、はっきり見えたりするからです。
例をあげて説明しましょう。たとえば抽象的な目的を述べた場合です。
抽象的な目的
×「本論ではスポーツ競技について論じる」
これでは、本論で何について論じられるのか判然としません。どういう答えが述べられるのか想像できません。
対して、具体的な目的を述べた場合です。
具体的な目的
〇「本論では、スポーツにおいて性別を2つに分けて競技をする必要性について論じる」
こうすれば明々白々たる答えが、本論にて述べられることが予測できます。
目的というのは「抽象的」に書いてはなりません。
できるだけ「具体的」に書くのが勘どころなのであります。
論点を読者に伝えるために序論はあるのです。
もしも具体的に、そしてピンポイントに書けない場合は、テーマが広すぎるのやもしれません。そういうお方は、テーマの決め方の記事をご覧ください。
序論の割合
以下に「序論」「本論」「結論」の分量の目安を示します。
- 序論
→分量は全体の10~15%程度 - 本論
→分量は全体の70~80%程度 - 結論
→分量は全体の10~15%程度
序論の分量は全体の10~15%程度とされています。
がしかし、目安はあくまでも目安であって、目安を目標と思い違いをしてはいけません。むやみやたらに書いたとしても全くの無意味なのです。
読み手のために書かねばならぬことを綴っていたら、10~15%程度になるということです。肝要であるのは、やはり序論の役割を果たしているかです。
文字数が少ないレポートの場合、テンプレート最後の「論展開の予告」は要りません。わざわざ展開を教えてくれなくても、サラサラと読めてしまえるからです。
序論が全体の15%をゆうに超えるようなら省いてもいいでしょう。
序論の例
序論を書くのに参考になる論文があったので紹介します。
1. はじめに
アカデミック・ライティングにおいて引用の指導は欠かせないものであるが、その効果的な指導法の開発はまだ十分とは言えない。特に間接引用については、原文を要約して行う引用と説明される傾向が見られるものの、その要約方法を具体的に示す教材や指南書はごくわずかである。一方で、読解・作文指導では要約指導に関して多くの知見を有しているが、その蓄積は間接引用の指導に適用できるのだろうか。そこで、本稿では教材や指南書の解説を整理し、読解や作文における要約と間接引用における要約との異同を明らかにするとともに、間接引用に必要となる要約とその指導法はどのようなものかを考察する。
中村かおり・近藤裕子・向井留実子「アカデミック・ライティングにおける間接引用で求められる要約とは」
ネットで論文を探して、書き方を真似するのもいいかもしれません。
まとめ
序論にて大事な考え方は、
読み手のことを想定して書く
ということでした。こう考えれば、序論にてやるべきことはただひとつです。
本論の全体像を伝えること
を意識することで、たちまち本論は読みやすくなります。
具体的に書くべき内容は、以下の三点です。
- なぜそのテーマを選んだのか
→背景・選んだテーマの重要性 - 何について話すのか
→テーマ・目的・問い・重要な概念の説明 - いかにして説明するのか
→論展開の予告・結論
これらを書けば、読み手を思いやった序論が仕上がります。